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おもいあい |
「火影さま!!!」 「止めてくださいよ!カカシさん働き過ぎです。」 「イルカ…」 三代目火影は目線だけをこちらに向けて ゆっくりと紫煙を吐き出した。 「カカシさん体調崩してるんです。 今日もうちの風呂場で戻してたんですよ?!」 「こんな体調で任務に出たら…!」 「…。」 火影は苦いものでも食べたような顔をした。 イルカだって解っている。 ここ最近任務が立て込んで上忍は皆火の付く様な忙しさだ。 売れっ子のカカシが休める訳が無い。 それでも――― 言わずに居られなかったのだ。 「ずっと休まずに任務に出てるから… 体調が戻らないんですよ。」 そんな体調で任務に出ると言うことは あきらかに危険だ。 それは火影も解っている。 しかし、カカシの代わりが出来る者は皆他の任務に付いている。 代わりが居なければカカシが出るしかないのだ。 任務を断れば里の手薄を外に知らせることになる。 そんなことは出来はしない。 「イルカよ…カカシのことじゃ。 無事に戻ってくると信じよ。」 「…解ってます。 カカシさんはきっと無事に戻ってくるって事くらい。」 「でも…」 「でも!」 「…」 「もしまた外で吐いたらどうするんです?」 忍にとって形跡を残すと言うのは危険でしかない。 その形跡がどんな情報を敵に渡すか解らないからだ。 些細な形跡すらも命取りになることがある。 それはカカシの様な戦忍には脅威になる。 「俺はカカシさんが自分で吐しゃ物の片付けするなんて許せません。 体調悪いのに自分で片付けるなんて…!」 イルカの肩が震えている。 カカシの身を案じてのことだろう。 火影はどう声をかけるべきか悩んだ。 「カカシさんの世話は俺が全部したいんですよっ!!!」 「日常の世話からぜんっぶ俺のものです。 本当なら服だって自分で着ないで俺が着せてあげたい位なんです!」 イルカの目が見開かれた。 「それを吐いたものを片付けさせるなんて!!!!! それは俺の役目だぁっ!!!」 火影は目の前に居るイルカが遥か遠くに居るような錯覚を覚えた。 「………イルカよ…」 とりあえず名前を呼んでみたが その後に続く言葉なんて思いついていない。 「あああああっ俺が付いていって世話を焼いてあげたい!!」 「俺が全部何もかもしてあげるのにっ!!!!」 火影は自分とイルカの間に風が吹いていることを感じた。 この風は実際には吹いていないことも解っている。 しかし、風のようなものが吹いている気がする。 結局火影はイルカが先ほどまで語った慟哭への返事は思いつかなかった。 (―――重っ!!!) かつての恩師と任務報告がてら世間話でもしようと 火影執務室の外で待っていたサクラは思った。 (イルカ先生ってはまると以外に重い人だったのね) イルカとカカシが付き合っていて。 イルカがカカシのことをぐだぐだに甘やかしていることも知っていたが ここまででは重過ぎる…。 サクラはくるりと火影執務室に背を向けて歩き出した。 なんだかもう話をしたい気分は殺がれてしまった。 ここでうっかりイルカにつかまったら 温厚な恩師の見たくない一面をさらに見てしまいそうな予感がした。 イルカはしばらく火影執務室から出てこなかった。 ―後日― サクラがカカシにその次第を話したら カカシは嬉しそうに頬を染めて笑った。 恩師2人は今日も幸せそうだ。 (これもアリか…うん。幸せならアリよね。) サクラは”割れ鍋に綴じ蓋”という言葉の重要性を嫌と言うほど感じた。 |
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