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イチゴ |
「イルカせーんせっ!」 「イチゴ買ってきたんですよーv食べましょうv」 「カカシさん。ありがとうございます。 カカシさんって果物結構好きですよね。よく買ってきてくれるし。」 「…あー。そう、ですかね。」 別に果物がすごく好きという訳ではない。 俺が果物を買うのはある目的のため。 今日こそは目的達成の願いを込めて、気合を入れる為に 奮発して一番高い箱に入ったイチゴを用意したのだ。 そんな俺の心のうちを知らずに(当然だ) イルカ先生がイチゴを摘んで口に運ぶ。 ああ、もう、可愛いな〜。 「うん。甘い。」 その笑顔の方がすっと甘いですよ。せんせ。 「美味しいですか?」 「はい。カカシさんもほら。」 おおおおおお!チャンス到来!!!! 「食べないと俺が食べちゃいますよ?」 ぱくっとイルカ先生がイチゴを食べる。可愛い。 いや。そうじゃなくて! ああああああ。今の流れ! 今の流れなんだよなぁ!!! 惜しい!惜しいな!オイ!! 「ははは。」 俺もイチゴを一口。うん。甘い。 さすがは木箱に入って売られていただけのことはある。 「こんな美味しいイチゴ食べたこと無いです。」 イルカ先生はニコニコ。上機嫌だ。 その顔が見れただけでももういいやと思えてくる俺はダメな人間だ。 目的はどうした?俺! でもこの雰囲気を壊したくないんだよー! この甘い雰囲気を壊すのも怖いんだよー! とか考えてる内にイチゴはもう残り少ない。 あああああああ。今回も目的は果たせないのかなぁ。 何回同じ事を繰り返しているんだろ。俺。 「あっ!」 「え?」 「イっイルカ先生!」 「はい?」 「その最後の一個俺に譲ってください!!」 「はぁ、いいですよ」 「だって俺!ずっと『はいどーぞvあーんv』『うーんv美味しいv』っていうのやりたくて 果物買い続けて来たんですよ!? ご飯でも良かったんですが見た目はフルーツの方が可愛いですよね?! 絵的にも。思い出的にも!!!」 「はいぃぃぃぃ??」 「ずっとイルカ先生とやりたいって思ってたんですーーーー!!!」 ………しまった。勢いで全部喋ってしまった…。 イルカ先生が最後の一個に触れた瞬間 どうにかしなくちゃって思ったら頭が真っ白になっちゃったんだ。 「………」 イルカ先生は当然ながらびっくりして ぽかんとしている。 そりゃ。大の男がそんな事言ってたらヒクって!!! そう、これが目的。 イチャパラの中でも俺の好きな場面。 なんでもないシーンのはずなのに密かにずっと憧れて来たんだ。 任務に明け暮れて里に帰る暇も無かった時 任務の合間に読んだイチャパラの、なんでもないシーン。 何故か忘れられなくてずっと頭の片隅に置いてあった。 青臭い十代の頃に憧れて、二十代にはそんなの物語の中だけだって思ってたのに イルカ先生と恋人になれたら、憧れてたあの気持ちを思い出しちゃったんだ。 でも。 三十路間近の男がキツイって。 解ってたから言い出せなかった。 でも諦められなくて果物を買って来た。 …き、気まずい…っ! ああああ。もうイルカ先生の顔見れないよ。 いっそこのまま消えてしまいたい! この沈黙に耐えられない!! 「……ど、どうぞ。」 「えっ???」 見るとイルカ先生の顔は真っ赤で 目を合わせてくれないけど でも しっかりと、その手は俺にイチゴを差し出してくれている。 「あ…アリガトウゴザイマス…!」 こうして俺の目的は遂に達成されたのだ。 なんとも言えない甘さを感じたとき ―やっぱり一番高い箱入りイチゴにして良かった。―と思った。 |
20080224 乙女カカシが好きです。 |
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